妊娠中に上の子への授乳を続けていて「お腹の赤ちゃんに影響はないのかな」「おっぱいをやめた方がいいのかな」と不安になっていませんか。
この記事では、妊娠中の授乳を続けるメリット・デメリット、やめた方がよいケース、卒乳・断乳の進め方まで、産婦人科・小児科の情報をもとにわかりやすくまとめます。
妊娠中に授乳を続けるときに知っておきたい基本
まずは、妊娠中に授乳を続けることがそもそも安全なのか、どんな点に気をつければよいのかといった基本から整理していきましょう。
妊娠中に授乳を続けることは基本的に可能
健康な妊娠経過であれば、多くの場合は妊娠中に授乳を続けることが可能だとされています。
おっぱいを吸われることで子宮が少し収縮することはありますが、正常な妊娠では、この収縮がすぐに流産や早産につながることはまれだと考えられています。
実際に、世界保健機関(WHO)などでも、特別な合併症がなければ妊娠中も授乳を続けられるというスタンスが示されています。
ただし、妊娠中の授乳を続けるかどうかは、お母さんの体調や妊娠の状況、上の子の年齢や気持ちなどによっても変わってきます。
妊娠中に授乳を続けるときのメリット
妊娠中に授乳を続けることには、いくつかのメリットがあります。
- 上の子が安心できる時間を持てる
- 卒乳のタイミングをお子さんのペースに合わせやすい
- スキンシップが増え、情緒の安定につながりやすい
- 授乳でしか眠れないお子さんの場合、生活リズムを急に変えなくてよい
- お母さんも「まだ甘えさせてあげられている」という安心感を持てる
特に、下の子の妊娠は、上の子にとって環境が大きく変わる出来事です。
妊娠中も授乳を続けることで「お母さんは自分のことも大切にしてくれている」と感じ、赤ちゃん返りの程度が和らぐ場合もあります。
妊娠中に授乳を続けるときの注意点
一方で、妊娠中に授乳を続けるときは、いくつかの注意点もあります。
| 注意点 | 具体的な内容 |
|---|---|
| お母さんの体力 | 妊娠により疲れやすくなるうえ、授乳はカロリーも体力も消耗する |
| つわり | 気持ち悪さや匂いのつらさで、授乳自体が負担に感じやすい |
| 子宮の張り | 授乳中や授乳後にお腹が張りやすくなることがある |
| 乳頭痛 | 妊娠によるホルモン変化で乳首が敏感になり、痛みを感じやすい |
| 栄養バランス | お母さんの栄養不足になると、疲労感や貧血が強く出ることがある |
妊娠中の授乳を続けるかどうかを考えるときは、「お腹の赤ちゃんに悪いかどうか」だけでなく、「お母さんの心と体に無理がないか」を一緒に大切にしてあげてください。
妊娠中の授乳と流産や早産のリスク
妊娠中に授乳を続けると流産や早産のリスクが上がるのではないか、と心配される方はとても多いです。
現在の研究では、妊娠経過が順調なお母さんが上の子へ授乳を続けても、多くの場合は流産率や早産率が特別高くなるとはいえないと報告されています。
ただし、切迫流産や切迫早産と診断されている場合、また多胎妊娠や子宮頸管が短いといったリスクを指摘されている場合には、授乳を控えるよう指導されることがあります。
妊娠中の授乳について不安があれば、自己判断だけで続けるのではなく、必ずかかりつけの産婦人科医や助産師に相談しましょう。
妊娠中の授乳でおっぱいの変化に気づいたら
妊娠が進むと、ホルモンの影響で母乳の量や味が変わることがよくあります。
突然おっぱいを飲む回数が減ったり、急に嫌がるようになったりするお子さんもいますが、多くは味や量の変化に戸惑っているだけです。
そんなときは、お子さんの気持ちを受け止めつつ、「おっぱいの味が少し変わってきたかもしれないね」とやさしく声をかけてあげましょう。
自然に回数が減っていくようなら、その流れに乗って少しずつ卒乳へ進めるよいタイミングになる場合もあります。
妊娠中に授乳をやめた方がよいケースと判断
ここからは、妊娠中でも授乳を続けてよい場合と、やめた方がよい場合の違いについて、具体的に見ていきます。
授乳を中止したほうがよいとされる主な状況
妊娠中の授乳を医師から中止するよう指示されることがあるのは、次のようなケースです。
- 切迫流産や切迫早産と診断されている
- 強いお腹の張りや出血が続いている
- 前置胎盤など、もともと出血リスクが高いと言われている
- 多胎妊娠で子宮への負担が大きい
- 子宮頸管が短く、安静指示が出ている
- 妊娠高血圧症候群など重い合併症がある
これらに当てはまる場合は、妊娠中の授乳を続けることで子宮収縮が刺激になり、妊娠の継続に影響する可能性が否定できません。
授乳中に違和感や不調を感じるときは、遠慮せず早めに産婦人科を受診しましょう。
お母さんの心や体がつらいときも中止を検討
医学的な理由がなくても、妊娠中の授乳が大きな負担になっている場合は、やめることを考えてもかまいません。
| つらさの例 | 具体的なサイン |
|---|---|
| 体のつらさ | 授乳のたびにぐったりして動けない、立ちくらみや息切れが強い |
| 心のつらさ | 授乳が苦痛でたまらない、イライラして子どもに当たってしまう |
| 乳房の痛み | 乳首がしびれるように痛い、触られるのもつらい |
| 日常生活への影響 | 授乳で夜ほとんど眠れず、日中も何も手につかない |
授乳は「お母さんと子どもの双方が心地よいこと」が基本です。
どちらかがつらさを強く感じているなら、回数を減らしたり、時間を短くしたり、いずれはやめる方向へ進めることも、立派な育児の選択肢です。
上の子の年齢と栄養面から見る判断ポイント
妊娠中の授乳を続けるかどうかは、上の子の年齢や栄養状態も目安になります。
1歳を過ぎて離乳食がしっかり進んでいるお子さんなら、母乳は「栄養の柱」というより「安心のスイッチ」の意味合いが強くなっています。
この場合、妊娠中の授乳をやめても、栄養面で大きな問題になることは少ないでしょう。
一方で、まだ月齢が小さく、母乳が主な栄養源になっている場合は、急な断乳はお子さんにも負担が大きくなります。
妊娠中の授乳をどこまで続けるかについては、産婦人科とあわせて小児科や保健師に相談しながら、上の子の発達段階も含めて一緒に考えていけると安心です。
妊娠中に授乳を続けるときの具体的な工夫
妊娠中も授乳を続けたい、またはしばらくは続けざるを得ない場合、なるべくお母さんの負担を減らしながら乗り切る工夫が大切です。
体に負担をかけにくい授乳姿勢
お腹が大きくなるにつれて、これまでと同じ授乳姿勢がつらくなることがあります。
そんなときは、次のような姿勢を試してみてください。
- 横向きに寝転んでの添い乳にして、お母さんの腰や背中の負担を減らす
- クッションや授乳クッションを多めに使い、お腹を支えるように座る
- ソファやベッドにもたれかかり、体を預けながら授乳する
- 長時間吸わせず、「10数えたら終わりね」など時間を決める
お母さんが楽な姿勢を優先してよく、完璧な授乳フォームでなくても大丈夫です。
少しでもリラックスして授乳できるよう、クッションやひざ掛けなども上手に使ってみましょう。
栄養と休息を意識して自分をいたわる
妊娠中に授乳を続けているお母さんの体は、「妊娠」「育児」「授乳」という三つの大仕事を同時にこなしています。
そのため、普段以上にエネルギーと栄養、そして休息が必要です。
食事では、主食・主菜・副菜をそろえつつ、鉄分やカルシウム、たんぱく質を意識してとるようにしましょう。
どうしても食べられないときは、産婦人科で相談し、サプリメントなどの力を借りる選択肢もあります。
また、家事を完璧にこなそうとせず、「今日はここまでできたら十分」と自分に言い聞かせてあげてください。
パートナーや家族、周りの人にも、「妊娠中の授乳で疲れやすいこと」を言葉にして伝えることは、お母さんの心と体を守るうえでもとても大切です。
妊娠中の授乳と上の子の気持ちのサポート
妊娠中の授乳をどうするかは、上の子の気持ちにも大きく関わるテーマです。
ここでは、上の子の心を支えながら、授乳の続け方ややめ方を考えるポイントをお伝えします。
赤ちゃんが生まれる前からの声かけ
お腹の赤ちゃんの存在を、上の子にも少しずつ伝えていくことは大切です。
「もうすぐ赤ちゃんが生まれてくるよ」「お兄ちゃん(お姉ちゃん)になるんだね」といった声かけに加えて、「赤ちゃんが生まれたら、おっぱいを赤ちゃんにもあげるんだよ」と、授乳の変化についても少しずつ話していきましょう。
急に「今日からおっぱいおしまい」と言われるより、心の準備がしやすくなります。
話すときは、「あなたも大事」「赤ちゃんも大事」というメッセージを、できるだけ繰り返し伝えてあげてください。
授乳以外の安心できる習慣を育てる
妊娠中の授乳が減っていくとき、代わりになる「安心の時間」を用意してあげると、上の子の心が安定しやすくなります。
- 寝る前の絵本タイムを毎日の習慣にする
- ぎゅっと抱きしめるハグの時間を意識的に増やす
- 「おひざの上でギューの時間」など、特別なスキンシップの名前をつける
- お気に入りのぬいぐるみを「一緒に寝るお友だち」として紹介する
- 日中に「ママをひとりじめできる時間」を少しでも作る
妊娠中の授乳を続けるかどうかにかかわらず、こうした習慣があると、赤ちゃんが生まれたあとの生活にもスムーズにつながっていきます。
妊娠中に授乳を続けるか迷うお母さんへのメッセージ
妊娠中の授乳については、「続けるべき」「やめるべき」といった一つの正解はありません。
お母さんの体調や気持ち、妊娠の経過、上の子の年齢や性格、家族のサポート状況など、さまざまな要素が影響します。
この記事でお伝えしたように、健康な妊娠経過であれば、妊娠中に授乳を続けても大きな問題にならない場合が多いとされています。
一方で、切迫流産・切迫早産などのリスクがあるときや、お母さん自身が強い疲れやつらさを感じているときは、授乳を減らしたりやめたりすることも大切な選択です。
どちらを選んでも、お母さんが自分と子どもたちを思って悩み、考えた時間があること自体が、すでに十分な愛情の証です。
不安や迷いがあるときは、一人で抱え込まず、産婦人科や助産師、地域の保健師さんなどの専門家にぜひ相談してみてください。
あなたと、お腹の赤ちゃん、そして今目の前にいるお子さんが、それぞれのペースで安心して過ごせますように。